
1%の攻防に裁判所はどのような判断を下すのか――。百貨店大手、エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングとディスカウントスーパー大手、オーケーによる関西スーパーマーケットの争奪戦。オーケーが神戸地裁に申し立てたH2Oと関西スーパーの経営統合差し止めの仮処分について、関係者は来週にも決定が出されるとみている。「企業法務の担当者や学界も非常に注目している」と話す大阪大学大学院高等司法研究科の松尾健一教授(会社法)にポイントを聞いた。
今回の申し立てでは、ある法人株主が投じた約1%分の票を賛成と扱うか、棄権や無効(不行使)として扱うかが争われている。裁判所の判断次第で統合の行方が左右される。松尾教授は「1%の票の扱いによって結論が変わる。両社の買収方法も異なり、極めて珍しいケースだ」と強調する。まずは、争奪戦の経緯を振り返ってみよう。
きっかけは、阪急阪神百貨店などを傘下に持つH2Oと関西スーパーが8月31日、経営統合を発表したことだ。10・65%を保有する筆頭株主のH2Oが株式交換で関西スーパーを子会社化したうえで、H2O傘下の食品スーパー「イズミヤ」「阪急オアシス」と統合する内容。売上高計4000億円規模のスーパー連合をつくり、関西での地盤を固める狙いがある。
これに待ったをかけたのが7・69%を持つ第3位株主で、130店舗以上を首都圏で展開するオーケーだ。9月3日、H2Oとの統合に反対し、株式の公開買い付け(TOB)で関西スーパーを完全子会社化する方針を発表したことで争奪戦に発展した。関西進出を目指すオーケーは、過去最高値(1株2250円)で関西スーパー株を買い取る破格の条件を提示し、H2Oを揺さぶった。争奪戦の舞台となったのが10月29日に開催された関西スーパーの臨時株主総会だ。
総会には多くの報道関係者が取材に訪れ、議事の途中でもテレビなどで大きく報じられた。多くの注目を集める中、関西スーパーとH2Oとの経営統合案が採決され、賛成率は66・68%。可決に必要な出席株主の「3分の2」をわずかに上回った。僅差とはいえ、争奪戦は終息するはずだった。しかし、12月1日の経営統合を前に、H2O関係者をも驚かせた「衝撃の事実」が判明した。
問題の「1時間10分」
「総会での集計に疑義がある」。オーケーは11月9日、関西スーパーが恣意(しい)的に棄権票を賛成票に取り込んだとして、経営統合差し止めの仮処分を神戸地裁に申請した。裁判所が派遣した総会検査役の報告書で新たな事実が明らかになったためだ。総会の集計作業で何が起こっていたのか。取材メモと検査役の報告書などを基に問題となった当日の「1時間10分」を再現してみよう。
「開票(作業)はまだ最終段階に入っておりません。非常に僅差です」。総会開始から5時間が経過した午後3時、議長を務める福谷耕治社長が休憩の1時間延長を宣言すると、報道関係者用の傍聴席から「えっ」「僅差?」などのどよめきが起こった。
この宣言の直後、検査役は集計担当者からいったん、賛成票が65・71%との報告を受けていた。出席株主の3分の2を下回り、統合案は「否決」になるとの内容だ。
この報告から30分ほど経過した後、オーケーの仮処分申請につながる出来事が起こる。ある法人株主の「職務代行者」として出席した男性が、自身の票の取り扱いを確認したいと総会受付に申し出た。事前に賛成の議決権行使書などを送っていたが、当日の総会で、賛否を書かずに「白票」を投じてしまったためだ。法曹関係者によると、総会の実務上、事前の議決権行使より当日の票が優先されるのが通例。白票なら「棄権」となる。
連絡を受けた関西スーパーの代理人弁護士は、検査役とともに男性の意思や投票経緯を確認。男性は「事前に送った議決権行使書や委任状の賛成欄に〇を付けていたので(投票用紙の)マークシートは白紙で出した」と説明した。投票の回収担当者にも「事前に議決権を行使したが、(白票を)入れて大丈夫か」と声掛けしていた。集計作業が長引いたことで、「自分が出したマークシートの取り扱いが気になり、受付の人に聞いてみた」という。
本人が賛成の意思を説明したことなどから、関西スーパーは当初「棄権」と扱った男性の票を「賛成」に修正。この結果、賛成率が0・97ポイント増えて66・68%となり、3分の2を超えた。総会は午後4時10分ごろ再開され、議長が「可決」を宣言。6時間超に及ぶ総会は幕を閉じた。
当初の集計が修正されたことについて、オーケーは「株主に賛成の意図があっても投票を締め切った以上、棄権として扱うべきだ」などと批判している。
…
からの記事と詳細 ( 関西スーパー争奪戦1%の攻防 裁判所の判断は? 学界も注目の論点 - 毎日新聞 - 毎日新聞 )
https://ift.tt/3HtlWNU
No comments:
Post a Comment