ヒャダイン / 音楽クリエイター
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第85回「『スーパーマリオメーカー 2』が育てる未来のゲームクリエイター達に期待大」
ども。お正月はいかがお過ごしでしたか?
私は連日飲んで飲んでの繰り返しで,年明け早々に受けた健康診断で肝臓の数値が少しだけ悪く,お医者さん相手に小っ恥ずかしい思いをしました。今年も一年よろしくお願いします。
今年もまた,新作ゲームがたくさん出る予定ですね。私も「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(Nintendo Switch / Wii U)の続編が楽しみで楽しみで仕方ありません。もっとも発売時期が「2022年」とのことなので,いろいろと事情もあるだろうし今年中に出たらいいなーぐらいの心構えでおります。
あと,愛してやまない「アンチャーテッド」シリーズの2タイトル,「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」「アンチャーテッド 古代神の秘宝」がPlayStation 5向けにリマスターされ,「アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション」として発売されるのがメチャクチャ楽しみです(関連記事)。あれは本当にプレイできるハリウッド映画! ……って言っていたらなんと実写映画化され,2月18日に日本でも公開されるんですねえ(関連記事)。昔は映画がゲーム化されることのほうが多かったと思うんですが,ゲームが映画になるケースも増えてきましたね。
そして何より楽しみなのが「Pokémon LEGENDS アルセウス」! フィールドを駆け回って今までにない方法でポケモンを捕まえたり,空を飛んだり地を駆けたり海を泳いだり。ずっとポケモンの世界に浸れちゃいそうですねえ。
さてそんな中,私は今年のお正月,今さらながら「スーパーマリオメーカー 2」にハマってずっとプレイしておりました。全世界のプレイヤーが好きにコースを作ってネットで公開し,みんなが自由にプレイできるという人気作品の2作目です。
まず私は謝らなければならない。このゲームを,「素人が作ったコースで遊ぶんでしょ(笑)」と,少々冷めた気持ちでとらえていたことを。時間を割いて遊ばなきゃと思えるクオリティなのかって。
ところがこれが面白いのよ。プロ顔負けの凝ったコースもあれば,会社だったら上司の許可が下りなそうだけどインディーズ的な面白さのあるコースもある。さらに,まったく制作意図が理解できないようなコースもあれば,謎解きコースや音楽を奏でるコースまで。全然思っていたのとちゃうやんけ! すごいすごい。
そして自分自身を省みるところもあって。というのも,なんだかんだでゲームをプレイするときに攻略サイトに頼っていたなあーって。しかしこの作品のコースには,よほど人気を集めているものでもない限りは,攻略サイトもなければTwitter上にヒントもない。せいぜいあるのは,ゲーム内のコメント欄。
さまざまな言語で寄せられたコメントの中に,薄いヒントが時々隠れていて,それを頼りに解いてみたり。あと,分からなかったら本当に3時間くらい繰り返し挑んでみたり。いつの間にかググり癖がついていたんだなあ。楽することを覚えちゃってたんだなあ。
そういう意味では昔のゲームを思い出す難度のコースに出会うことも,しばしばあります。
このゲーム,プレイヤーは一つアカウントに,ゲームクリエイターとしてもプレイヤーとしても履歴が残るので,それを数珠つなぎ的にたどってみると,良質なコースにたくさん巡り合えたりするのも,これまた楽しい。
そこで気付いたことがあるんです。アカウントに書かれている自己紹介とかコース名,説明文,あとアカウント名を見ていると,「え,これ,子供じゃない?」と思うことがちょいちょいある。もうね,小学生,ないしは中学生の文章だったりするんですよね。
これはクリエイターの文章が稚拙なわけではなくて,実際に幼いんでしょう。コメントには「今日13歳の誕生日を迎えました」とか,子供らしい筆跡の手書きコメントで「小2でも解けたよ」とか。
そうなんですよ。生まれて数年の子が作ったコースを41歳男性がプレイできる世界線! そしてすでに“スーパーマリオメーカーのコミュニティ”がしっかり生まれているようで。名の知られたクリエイターもいたり順位を競ったりオフで交流したり。
趣味のセグメント化が進んでいる昨今,知らないことだらけです。こんなところにもセグメント。そりゃ世の中の全部のセグメントは拾いきれませんね,到底。
で,このスーパーマリオメーカー 2。最近の潮流とも合致するなあと感じたんですよ。ここ数年のYouTuberブーム,さらに言うと「歌い手」文化もそうですよね。あと最近で言えばVTuberもそうかもしれません。
芸能事務所に所属して,そこから売り込まれて売れていくという,いわゆる“芸能人”と違って,自分達で実況したり動画を作ったり,さらには歌ったり生放送したりして人気者になっていく方達が多いじゃないですか。こういう傾向に対して,「素人がプロのまねごとで注目を集めやがって」的なヘイトが向けられることもあります。
しかし言わずもがな,前述の形態は今や一つの潮流になっていますよね。まさしくニューノーマル。むしろ「親近感が湧く」とか「距離が近い」とか「毎日更新してくれる」とかで,若年層からは圧倒的な支持も得ています。その流れもあってか,かつての言葉で言うところの「素人」が発表した作品であっても,「誰の」作品かではなく,「どんな」作品かを評価して楽しむということが,今の若い人達には自然体でできているのではないでしょうか。
ゆえに,スーパーマリオメーカー 2もレベル差を気にせず伸び伸びと若い人達が投稿し,そしてそれをプレイしてワイワイ楽しむという土壌が生まれているように思います。
でね。考えたんですよ。2020年から小学校でプログラミングの授業が始まりましたよね。各社知恵を絞ってこの新しい教育産業に参画しようとしていると思うんですが,ひょっとしたらスーパーマリオメーカー 2って,その理想形なんじゃ? と。
子供達は楽しくコース作りをする。そしてそれをたくさんの人に遊んでもらい,評価される。そこには金銭の授受はいっさいなく,「やりがい」があるのみ。もし自分が作ったコースの人気が出なかったら,もっと努力して知恵を絞ってコースを作る。そうやっているうちにゲーム作りであるとか,デジタルの世界で何かを作ることへの興味や関心が高まっていくんだと思います。
「大合奏!バンドブラザーズ」シリーズで初めて作曲を体験し,そこからDTMへステップアップし,ミュージシャンを志して世に出た人がいるように。さらに手前味噌ですが,「ニコニコ動画」に投稿してやりがいを感じ,プロの道へ進んでいったクリエイターがいるように。
10数年後,世界中のとんでもないゲームクリエイターにインタビューをしたら,「ゲーム作りを最初に意識したのはスーパーマリオメーカー 2だったんだ」なんて言う人が出てくる可能性ありありですよね。ひょっとしたらこのゲーム,未来の人材まで育成しているのかも?
未来の天才ゲームクリエイターの処女作かもしれないコースを、今日もしっかりとプレイさせていただきます! いい時代だ!
■■ヒャダイン(音楽クリエイター)■■ 数年前までは年末年始を海外で過ごすことの多かったヒャダイン氏ですが,今年は年明け早々に京都の名銭湯,白山湯でサウナ始めをしてきたそう。これはこれで悪くなかったとのことです。 |
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