熊本県の「県産アサリ緊急出荷停止宣言」を受け、県内のスーパーなどでは２日、店頭に並ぶアサリを回収するなど対応に追われた。買い物客からは「びっくりした」「信じられない」という驚きや、「また産地偽装か」といった憤りの声が聞かれた。
アサリは春が最も身が詰まっておいしく、出荷の最盛期とされる。熊本市西区の熊本地方卸売市場（田崎市場）にある鮮魚卸「大海水産」によると、現在は地元での水揚げが少なく入荷があまりない状況。担当者は「しばらくは影響が少ないと思うが、１年で一番出回る時期に売ることができなくなる」と肩を落とす。
同市中央区のスーパー「八王寺センター」では、宣言が出された１日のうちに、熊本県産として販売していたアサリのパックのラベルを、仕入れ先に確認し、全て「中国産」に貼り替えた。「県産の方が売れ行きがいいので、売り上げは減ると思う」と担当者。
県内で複数店舗を展開する別のスーパーでは、県産に限らず店頭に並んでいたアサリが２日の開店時には全て姿を消していた。仕入れも１日から止めた。「仕入れ先の仕入れ先まで、さかのぼれる限りさかのぼり、正しい生産地を調査している」という。担当者は「絶対に正しい生産地だと確認できるまでは売ることができない」と話す。
別の量販店でも、３日の開店時までに店頭に並んでいるアサリは全商品回収するという。県内の小売業者からは「食品表示法ができたのにまた産地偽装か。国や県には制度の本質をしっかりと整えてほしい」という声も上がった。
２日、熊本市内のスーパーで買い物をしていた同市中央区の薬剤師の女性（６６）は、「肉も野菜も魚もなるべく県産や国産を買うようにしている。今回の産地偽装は信じられない」。みそ汁や酒蒸し用によくアサリを買うという同区の主婦（５４）は「地元のだから安心と思い、熊本産を選んで買っていたので残念。ニュースを見ていると熊本が悪いというふうにも受け取れたので、事実をきちんと明らかにしてほしい」と問題の解決を願った。（東有咲）
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