山梨県でつくられた水素が、三重県の鈴鹿サーキットで19日に開幕した「スーパー耐久シリーズ」の第1戦で、トヨタ自動車のレーシングカーの燃料に使われている。山梨の水素製造事業を新たな県財源にしていく試みの一環。同社の豊田章男社長らが開いた記者会見に招かれた長崎知事は、「(水素社会という)現実的な未来に一歩近づいた」と話した。(村岡拓弥)
サーキット内に設けられた燃料スポットにトヨタの「水素エンジンカローラ」が滑り込むと、スタッフがホースを素早くつなぐ。水素の補充が終わると車は勢いよく走り去った。
同シリーズは、カローラ(トヨタ)、フィット(ホンダ)、デミオ(マツダ)など、市販の四輪車を改造して競う自動車レース。今年は日本各地のサーキットを会場に第7戦まで予定されている。鈴鹿でのレースは第1戦に位置づけられ、決勝では1周約6キロのコースを5時間走り続ける。19日は予選があり、20日には決勝が行われる予定。
トヨタはこのレースにガソリン車で出場してきたが、昨年からは水素で走る車両も参加させている。燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さない水素は、石油などの化石燃料に代わるクリーンエネルギーと言われる。トヨタは水素を燃料とする燃料電池車(FCV)「ミライ」を2014年に発売するなど、水素を「使う」技術開発に投資してきた。
一方、県は甲府市の米倉山の太陽光発電所で生じた余分な電力を使い、水を電気分解して水素を「つくる」研究に、東京電力ホールディングスや東レなどと取り組んでいる。現在は1時間でFCV6台分にあたる300立方メートルを生み出せる。製造過程でCO2を出さないため、「世界レベルの技術」(県幹部)という。
今回の鈴鹿での取り組みは、県の事業を支援する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がトヨタと県を仲介したことで初めて実現した。
予選開始前に開かれた記者会見には、豊田社長のほか、マツダやSUBARU(スバル)の社長らも出席。豊田社長が「今回、新たに山梨県から太陽光由来の水素を供給していただく」と紹介すると、来賓として出席した長崎知事は「再エネから水素をつくる装置を国内外に展開していきたい」と意気込みを語った。
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