未来を形作るコンセプトカーtext:AUTOCAR UK編集部translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
自動車業界は常に未来にこだわってきた。メーカーは将来の自動車を形作るデザインや技術を予測し、表現しようとしてきた。そしてその努力は、コンセプトカーという形で世界に姿を現す。
一口にコンセプトカーといっても、様々な形がある。その多くは、近い未来に登場するクルマのプレビューであり、新型車への関心と理解を高めるために公開される。
ミニACV 30他には、特定の技術や機能、デザイン要素を強調して紹介するように設計されているものもある。また、遠い未来のクルマがどうなっているか予測する概念的なものも存在する。
多くの場合、こうしたコンセプトカーは研究開発のためだけでなく、社会的関心を高めるために作られる。中には、モーターショーが間近に迫っていて、実際に展示するものがなく、手元にあるものをかき集めて、かろうじて完成したモデルもある。
仮にモーターショーが衰退したとしても、コンセプトカーの終焉につながるとは思えない。展示台の枠を埋めるだけではなく、業界にとっても有用なツールである。
自動車の世界がどこに向かっているのかを知るには、コンセプトカーを見るのが最適だ。特に、EVやコネクテッドカー、自動運転技術が台頭し始めている今、未来予測には重要な鍵となる。
2016年のフォルクスワーゲンIDコンセプトは、MEBプラットフォームと新しい「ID」ブランドを立ち上げるために使用された。そのデザインは市販車のID.3でもほとんど変更されなかった。
注目すべきことに、IDコンセプトに続いてCrozz、Buzz、Vizzion、Roomzzなど、今後数年の間にIDファミリーに加わるであろう多くのコンセプトも登場している。
不出来なお気に入り
コンセプトカーには、新技術と市販車のプレビューを融合させたものもある。
最近発表されたルノー・モルフォズは、ボディが変形するという画期的なアイデアを紹介するとともに、次期量産型電動SUVのプレビューとして登場した。
ベンチュリー・エレクトリック ベンチュリーアウディは4つのコンセプトシリーズを制作し、サブスクリプションによるカーシェアリングのビジョンを披露した。しかし、その中にはMEBベースの小型ハッチバック(AI:ME)や新型スーパーカーのプレビューも含まれていた。
市販化されないコンセプトカーでも、未来を見せることができる。ボルボは新ブランド「ポールスター」を立ち上げ、現在のブランドのアイデンティティに合わないスポーティなコンセプトカーを活用しようとしている。
他にも、フォルクスワーゲンは1997年から2001年にかけてスーパーカーのコンセプトカーを開発している。パワフルなW12エンジンを開発するために使用され、一連のスピード記録を打ち立てた。このエンジンは後にブガッティのW16の開発に役立てられた。
生産意図のないコンセプトカーであっても、未来を導くことができるのだ。プジョーの美しいクーペ「eレジェンド」は、市販車のプレビューとしてではなく、将来の自動運転車がいかに「エモーショナル」なものかを実証するために作られた。
しかし、すべてのコンセプトカーが役に立つわけではない。技術が実を結ばなかったり、メーカーの優先順位が変わってしまったり、あるいは世間の反応が悪かったりするからだ。
未来予測は常に当たるわけではない。しかし、ショールームに届かなかったコンセプトカーの多くは、今でも評価に値するものだ。
そこで、英AUTOCARのチームに、未来を形作るには至らなかったコンセプトカーの中から、お気に入りのものをピックアップしてもらった。
ミニ・スピリチュアル
時すでに遅し。1997年のジュネーブモーターショーで「ミニ・スピリチュアル」と、より大型の「スピリチュアル・トゥー」が現れたときには、すでにその時代は終わっていた。
1990年代初頭、ローバーはミニに取って代わることを考え始めた。ミニは1959年に登場して以来、絶えずアップグレードされてきたが、コンセプトは変わっていなかった。しかし、1994年1月にBMWがブリティッシュ・エアロスペース社のローバー株を買い取り、新しい経営陣のもと、1995年には新型ミニの方向性が決定されることになった。
ミニ・スピリチュアルスピリチュアルとスピリチュアル・トゥーは、ローバーが持ち込んだ巧妙なアイデアだった。3ドアの小型車で、オリジナルのミニよりは短いが、フィアットのプント・スーパーミニと同じくらいの室内空間を持っていた。
トゥーの方は、プントよりも短いものの、後部座席にはメルセデス・ベンツSクラスと同じくらいのスペースがあった。
ローバーは当時、フロントにエンジンを搭載したクルマは、フロントに衝撃を吸収する大きな構造物がなければ、厳しい衝突規制を満たすことはますます難しくなると考えていた。
そこでスピリチュアルでは、小型化された「K」シリーズエンジンをリアシートの下に横向きに搭載し、後輪を駆動させ、ホイールベースを大幅に広げて乗員スペースを確保することにしたのだ。
一方、BMWは全く異なるアイデアを披露した。モンテカルロ・ラリー優勝40周年でデモ走行を行った「ACV 30」というレトロなコンセプトカーである。
ローバーのスピリチュアル2台と、BMWのACV 30はジュネーブ・モーターショーで同時に発表され、1つの新型モデルに対して3台のコンセプトカーという、風変わりな展示となった。
ローバーは発表に際し、高級コンパクトカーとしてメルセデス・ベンツAクラスに対抗するモデルであることを認めている。
今のミニを見ていると、BMWが正しい判断をしたと考えるのが妥当だろう。しかし、スピリチュアルのコンセプトは、イギリスの自動車業界における「if」を象徴するモデルである。
フォルクスワーゲンUp!
フォルクスワーゲンの陽気で有能な小型車「Up!」には、スポーティーなGTIバージョン、電動モデル、そしてセアトやシュコダなどさまざまな派生型が存在する。
しかし、Up!は当初、1台の小型車としてではなく、Up!シリーズとも呼ぶべき大きなファミリーとして計画されていた。
VWスペースUp! VWUp!は2007年にコンセプトカーとして発表された。注目すべきはリアエンジン・リアドライブ(RR)で、つまり非常に柔軟性の高いプラットフォームを採用していたのだ。
これを活かし、小型ミニバン(スペースUp!)やシューティングブレイク(Up!ライト)など、幅広いコンセプトファミリーが登場している。
しかし、生産コストが高すぎるという理由から、「ニュー・スモール・ファミリー」と呼ばれるフロントエンジン・フロントドライブ(FF)の従来型のモデルに切り替えた。
その後も、オフローダー「バギーUp!」や小型SUV「タイグン」など複数のコンセプトが登場するが、ビジネスケースが合わなかったため、生産には至らなかった。
これは、VWがあらゆる市場のあらゆるセグメントを征服しようと計画していたときのことだ。しかし、結局コンパクトカーでどうやってお金を稼ぐかという問題を解決することはできなかった。
2011年のスズキとの提携解消は、すべきではなかったかもしれない。
レクサスLF-SA
レクサスがジュネーブショーでLF-SAを発表した2015年は、今とは時代が違った。2008年の不況から回復し、消費者は財政的な安心感を抱いていたので、「何か違うもの」を購入することに目を向け始めたころだ。
レクサスのデザイナーは、この傾向を十分に理解していたようだ。それか、ミニサイズのレクサスを提案することで笑いを誘いたかったのかもしれない。
レクサスLF-SA レクサスこのクルマは過剰なほどコミカルにデザインされていた。レクサスのデザイン要素を、小さなボディに山盛り詰め込んでいる。
もしそれがジョークだったとしたら、コピーライターたちは笑いを分かち合うことにした。
レクサスによると、LF-SAの形状が「凹型と凸型のコントラスト」を強調し、「ホイールアーチの上の強力なアンダーカットがデザインにユニークなプロポーションをもたらした」こと、そして全体が「ダイナミズムと前進感」を生み出しているという。
LF-SAが登場して消えてからの5年間で、ミニサイズのクルマは利益を上げにくいことが証明されてきたので、市販化されるとしてもまだ先の話だろう。レクサスはもっといいクルマをたくさん作っている。
BMW E1
BMWは2013年に風変わりなEV「i3」を発表したが、その20年以上前には、未来的な小型車「E1」という非常に類似したコンセプトカーがすでに登場していた。
BMWが初めてEVに参入したのはさらに前のことで、1972年にドイツで開催されたオリンピックで1602 Elektro-Antriebを発表している。搭載された電気モーターは42psを発揮し、航続距離は30kmだった。
BMW E11991年のフランクフルト・モーターショーで発表されたE1は、航続距離200km、最高速度120kmと、はるかに使い勝手が良かった。バッテリーの重さを相殺するためにプラスチックとアルミニウムで作られたボディは、900kgと軽量。コンパクトでありながら広々とした4シーターセダンである。
生産コスト、充電インフラの不足、充電中の火災リスクといった諸事情により、E1は実現しなかった。試乗したテスターによると、他の小型車よりもいたく気に入っていたようだ。
「環境に配慮した電気で走るからではなく、私が試した他のどの小型車よりも気に入っています。電気モーターを搭載していることはデメリットではありません。素晴らしいフォルム、優れたスペース効率、優れた乗り心地、シャープなハンドリング、静粛性、そしてシームレスなトランスミッションを備えています。BMWの基準から見ても、これは強打者と言えます」
E1は、理想的な都市型コンパクトカーだったかもしれない。しかし、1995年にミニブランドを買収したことで、小型車の方向性は決定づけられてしまった。
サーブ・フェニックス
2011年のジュネーブ・モータショーで発表された2ドアの2+2「フェニックス」は、サーブの意思表示であり、最新のデザイン言語や技術力を紹介するコンセプトであった。
これにより、ゼネラル・モーターズが長年放置していたオランダのスポーツカーメーカー、スパイカーの所有下でサーブを復活させることになった。
サーブ・フェニックス サーブデザインディレクターのジェイソン・カストリオタが「エアロモーショナル」と呼んだドラマチックなスタイリングは、サーブの自動車と航空の伝統を多く取り入れながらも、モダンなものだった。
フェニックスには革新的なハイブリッド・パワートレインが採用され、202psのBMW製1.6L ガソリンエンジンが前輪を駆動し、33psの電気モーターが後輪を駆動する。トルクベクタリング機能も備えている。
インテリアには、アンドロイドベースの新システムを搭載した8.0インチのタッチスクリーンなど、多くの革新的な機能が備わっている。
最も重要なのはプラットフォームである。これは次世代の9-3、9-5、9-4Xのために作られた新しいモジュール式のプラットフォームで、マクファーソンストラット式フロントサスペンションと、モータースポーツにインスパイアされた5リンク式リアアクスルというユニークな設計を特徴としている。
GMの束縛から解放されたサーブの未来は明るいものに見えた。しかし、フェニックスが発表されたときにはすでに資金が尽きており、2012年には破産宣告を受けていた。フェニックスには、その灰の中から蘇る機会すらなかったのだ。
シトロエン・ラコステ
これは、「必要性」が発明の母であることを証明するコンセプトなのかもしれない。
シトロエンは、不況の矢面に立たされていた頃、製品ラインアップが市民に愛されず、財政状態は暗礁に乗り上げていた。
シトロエン・ラコステ シトロエン2007年に機能的な「C-カクタス」コンセプトを発表し、その後2010年には「ラコステ」を発表した。フランスのファッションブランドから名前を取ったモデルで、デザインのミニマリズムを提唱していた。
もちろん、ラコステのDNAの一部が、今は亡きC4カクタスとして登場したことは事実であるが、それ以上に、ラコステはシトロエンの威厳を取り戻してくれた。
今日、シトロエンがスポーツ性よりも快適性を重視しているのは、好き嫌いの激しく分かれるクルマよりも、多くの人に愛されるクルマの方がいいという姿勢に起因するものであることは間違いない。
ラコステの核となっていたのは、超現代的で魅力的なスタイルではありながら、クルマを本質的なものに戻し、シトロエンブランドを世に送り出し、(最終的には)商業的な成功へと導いた元来の「je ne c’est quoi」の要素を取り入れることにあった。
そのため、ドアはなく、屋根も小さかった(センターレールから収縮させることが可能)。パワーは1.2L 3気筒ガソリンエンジンを搭載し、可能な限り軽量化を図り、CO2排出量は当時としては驚異的な100g/km以下に抑えられていた。
必要のないものは何も加えず、非常にシックであった。厳しい財政難の時代にあって、そのシンプルさは、高級ブランドが夢見ることしかできないような魅力的な楽観主義をもたらした。
だが皮肉なことに、ラコステはコストが高すぎて実現しなかった。
別の形で実を結んだコンセプト
VWマイクロバス、Bulli、Budd-E
復活したビートルが成功を収めた後、VWは長い間、タイプ2の次世代モデルを発売しようとしてきた。2001年には、ガソリンエンジンを搭載した「ニュー・マイクロバス・コンセプト」が作られる予定だったが、その前にスクラップされてしまった。
2011年と2016年には電動化が行われたが、どちらもコンセプトの段階を超えたものではなかった。しかし、2022年にはMEBプラットフォームを使用するID Buzzが生産開始予定だ。
ランドローバーディフェンダーDC100
ランドローバーDC100 ランドローバー2011年に公開された2つのDC100コンセプトは、ディフェンダーの後継モデルとして登場し、愛好家からはさまざまな反応が寄せられた。DC100はあくまでコンセプトに留まったが、新型ディフェンダーにはそのスタイリング要素が数多く引き継がれている。
ボルボ・コンセプトクーペ、コンセプト40.2
ボルボは2013年にコンセプトクーペ、2016年にコンセプト40.2を製作し、それぞれSPAおよびCMAプラットフォームを採用した。
だが、このトーマス・インゲンラスが描いた2作品は、ボルボの将来の方向性に合わないと判断され、スポーティな電動化ブランドとして「ポールスター」が誕生した。この2台のマシンは最終的に、それぞれポールスター1とポールスター2へと姿を変えた。
変わり種の燃料を使うクルマ
ゼネラルモーターズ・ファイアーバードXP-21
1953年に登場したこのコンセプトは、戦闘機のようなスタイリングで注目を集めた。380psのXP-21は見た目こそスタイリッシュだったが、ショールームに並ぶにはこれ以上ないほど非現実的であった。
フォード・ヌクレオン
核エネルギーが理想的な動力源として期待された時代、その欠点は明らかになっていなかった。1957年にフォードが発表したヌクレオンは、潜水艦用の小型原子炉をクルマに搭載したものだ。ありがたいことに、フォードがこのコンセプトを市販化することはなかった。
ベンチュリー・エレクトリック
GMファイアーバードXP-21 GMモナコを拠点とするベンチュリーは、単発的なEV製造と、優勝したフォーミュラEチームでよく知られている。2006年には、ソーラーパネルと風力タービンを備える小型発電機を搭載した3人乗りのEVを発表。しかし、その航続距離はわずか50kmだった。
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August 29, 2020 at 04:10PM
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