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Thursday, February 4, 2021

金継ぎ お気に入りの器を大切に - 佐賀新聞

お気に入りの器を大切に

 割れた陶磁器を繕う金継ぎ。金で仕上げられたその跡は、まるで新しい文様のよう。日本古来の修復技術ですが、自宅で手軽にできる方法もあり、近年ひそかにブームになっています。大切な器が壊れてしまったら、捨てずに“金継ぎ”でなおしてみませんか。

そもそも“金継ぎ”とは 

 金継ぎは、漆で器のヒビや割れを接着したり、欠けた部分を埋めたりした後に、修復跡を金で装飾していく技法です。漆でなおす技術は縄文時代、そこに装飾を施すようになったのは室町時代に始まったとされます。茶の湯が盛んだった時代、割れてしまった貴重な茶器に、新たな価値を与える金継ぎ文化が開花。昔は高価な茶器や古美術品に限られていましたが、現在は普段づかいの器を気軽に修復する人が多くなりました。技法は3種類、基本の「本漆金継ぎ」、漆と合成樹脂を組み合わせた「簡漆金継ぎ」、漆の代わりに合成樹脂を使う「簡易金継ぎ」に大きく分けることができます。特に近年人気なのは、時間もかからず比較的安い材料でできる簡易金継ぎ。初心者向けのワークショップや教室も各地で開かれています。

天然樹脂である漆

 漆の木の樹液を精製した天然の樹脂塗料で、接着剤にもなる漆。乾燥に時間がかかり、「本漆金継ぎ」の場合は、完成に1~2カ月を要します。体調や体質によってはかぶれるリスクも。

金継ぎに挑戦したいなら…

 専門書やインターネットでも金継ぎの方法は紹介されていますが、最初はワークショップなどで体験してみるのがおすすめ。正しい手順を理解でき、使用する材料や道具についても詳しく教えてもらえます。

器への愛着が増す、金継ぎの魅力

 現代では気軽に安価な食器が手に入るので、器が壊れたらすぐに買い替える人が多いでしょう。しかし、大切な人からの贈り物や、思い出の詰まった器などが割れ、泣く泣く処分した経験もあるのでは。金継ぎは、そんな「もったいない」「物を大切にしたい」という思いをすくい上げてくれます。傷だったはずの部分が金粉をまとい、新たな表情となるのも大きな魅力。専門家へ依頼するのも良いけれど、自分の手で楽しく修復すれば、器への愛着はさらに深まります。金継ぎという選択肢があれば、壊さないように飾って眺めていた器も気軽に使えるかもしれません。

どんなものがなおせる?

 陶磁器はもちろん、ガラス、漆器などさまざまな材質の器をなおすことができます。小さなヒビや欠けのほか、パーツがバラバラに割れていても可能。ちなみに、陶器と磁器、ガラスと陶磁器をくっつけたりと、異なる材質同士でも大丈夫です。

ヒビ・欠け

割れ

欠けた部分をリンゴや風船にアレンジしたり、ちょっとした遊び心を取り入れても。

金継ぎ体験Spot

\ある晴れた日に/

「金継ぎワークショップ」
 一人2~3点の陶磁器を、簡易金継ぎで繕うワークショップ。不定期で開催するので、SNSを要チェック
[住所] 佐賀市松原1-3-15 徳久ビル2A
[講師] 徳太郎窯 長尾徳太郎さん
[料金] 4500円(材料費込、茶菓子付)
[TEL] 0952-60-2628
[ IG ]  「aru.haretahini

\佐賀新聞文化センター/

「欠けた器、金継ぎで復活!」
欠けた器を接着剤や紙やすりなどで修復
[日時] 第4火曜10:00-12:30+月1回特別講座を開催
[住所] 佐賀市白山2-7-1 エスプラッツカルチャー教室
[講師] 武藤辰平美術館(武藤文庫)館長 武藤良平さん
[料金] 1320円、材料費300円
[TEL] 0952-25-2160

取材協力

徳太郎窯 長尾 徳太郎さん
2009年に大町町の自宅に窯を開き、作陶に励むかたわら金継ぎも行う。佐賀市の「ある晴れた日に」で定期的に金継ぎワークショップの講師を務める。金継ぎの依頼など、問合せはSNSのメッセージで。
IG「tokutarou_nagao

自宅の一室の様子。長尾さんの作品は、徳太郎窯もしくは224shop(嬉野市)で購入可能

 普段づかいの器なら簡易金継ぎがおすすめ。焼き物好きの編集部スタッフが、長尾さんの指導の下、実際に体験してみました。

所要時間 約2時間(2~3種類)
 ヒビ・割れ・欠けなど破損の状態にかかわらず、簡易金継ぎの材料や道具は同じ。ホームセンターなどで手に入るものを使用します。材料の扱い方や硬化時間はメーカーによって異なるので、しっかりと確認しましょう。いくつか修理したいものがあるなら、同時に進めた方が効率的です。また、口をつける食器の場合は、材料の安全性も気にしたいところ。できる限り、食品衛生に適合した材料を選ぶようにしましょう。


[材料]
1. エポキシパテ 木部用(10分硬化)
2. エポキシ樹脂系接着剤(5分硬化)
3. 水性工芸うるし
4. 真ちゅう粉

[道具]
a. つまようじ
b. 障子紙用カッター
c. 彫刻刀(平丸刀)
  ※刃先が丸くなっているもの
d. ダイヤモンドピット
e. 耐水ペーパー 320番
f. 小皿
g. スポイト
h. 面相筆

割れ、欠け/コップ編

1. 混ぜ合わせた接着剤(下欄参照)を、つまようじを使って器の断面に塗っていく。はみでるくらいにたっぷり塗ること。塗り終わったらパーツ同士をくっつけ、硬化するまで放置する。

2. 欠けた部分を埋めるように、手でパテ(下欄参照)を盛る。はみ出した部分は後から削るので、やや盛り上がっているくらいがちょうどよい。器に沿って形を整えたら、硬化するまで放置する。

3. 障子用カッターと彫刻刀を使い、断面からはみだした接着剤、余分なパテを削る。その後、水にぬらした耐水ペーパーで表面を研ぐ。

4. 水性工芸うるしと真ちゅう粉を小皿に入れて混ぜる(割合は1:1、工芸うるしはスポイトを使って入れる)。それを、欠けとヒビの上に沿って筆で塗っていく。内側から塗っていくと作業がしやすい。


 

5. 約2~3日放置してしっかりと乾かす。器は、きれいに水洗いしてから使用する。

割れ、欠け/器編

1. 欠けた部分を埋めるように、手でパテを盛る。はみ出した部分は後から削るので、やや盛り上がっているくらいがちょうどよい。器に沿って形を整えたら、硬化するまで放置する。

2. 彫刻刀を使い、余分なパテを削る。その後、水にぬらした耐水ペーパーで表面を研ぐ。


 

3. 水性工芸うるしと真ちゅう粉を1:1の割合で混ぜる。それを欠けとヒビの上に筆で塗っていく。

4. 装飾した部分が机に付かないように、箸などで浮かせた状態で乾かす。約2~3日放置し、きれいに水洗いしてから使用する。

【接着剤】

 2種類の液剤を混ぜ合わせるタイプ。1:1の割合で紙片の上などにだし、つまようじで混ぜ合わせる。5分たったら硬化し始めるので、作業手順に応じて準備する。

【パテ】

 粘り気があるのでゴム手袋をはめ、ファイルやアクリル板の上などで、必要な量をカッターで切り取る。2層になっているので、色ムラがなくなるまでしっかりと練ること。10分たつと木のように固まっていく。
 

【取扱い方】
金継ぎを施した器は、食洗機や電子レンジでの使用不可、じか火もNGです。研磨剤入りの洗剤は使わずに、やわらかいスポンジでやさしく手洗いするなど丁寧に扱いましょう。

 

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