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Tuesday, July 20, 2021

ネットスーパーとは? コロナ禍で加速する新しい売り方 - 日経ビジネスオンライン

食品や日用品をインターネットで注文し、自宅に届けてもらうネットスーパー。2000年ごろから始まったサービスは、コロナ禍の巣ごもり需要を背景に利用が広がっている。今回は、これまでに掲載した記事をもとにネットスーパーの流れを振り返っていく。

広がりを見せる「ネットスーパー」

 ネットスーパーとは、食品・日用品などをインターネットで注文し、自宅に配送してもらうサービスだ。日本では西友が2000年に始めた「西友ネットスーパー」が草分けとされる。01年にはイトーヨーカ堂が「アイワイネット」で参入した。インターネット回線の高速化が進むと、スーパー大手は相次いでネットスーパーの拡大を図った。

 ネットスーパーのサービス拡大は、既存の小売店や物流事業者にも大きな影響を与えてきた。特に新興の物流事業者を積極的に活用するアマゾンの方針は、物流大手のヤマト運輸などの戦略に変化をもたらしている。さらに近年はコロナ禍による外出自粛で、ウーバーイーツのような食事の宅配サービスも定着してきた。

 IT技術の進歩に加え、新型コロナウイルス感染拡大をはじめとする社会情勢の変化がネットスーパーの広がりを後押ししている。

ロストワンマイルの恐怖

 2015年の記事では、セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂が、倉庫と店舗の垣根をなくしたネットスーパーの新型店開業を急ぐ様子を紹介した。店内にレジはなく、お客が入店して買い物をすることもできない。その代わり、ベルトコンベヤーなどを設置し、ネットからの受注をさばく拠点となる。こうした店舗は「ダークストア」と呼ばれる。

 イトーヨーカ堂は、「実店舗もネットスーパーも同じ。ダークストアは新たな出店形態の一つ」と位置付けた。こうした試みの背景には、米アマゾン・ドット・コムによる生鮮食品宅配の参入が見えてきたことがあった。米国では、アマゾンが都市部に小型の専用倉庫を整備して消費者に届ける最終工程「ラストワンマイル」にかかる時間を短縮し、生鮮品を素早く届ける準備を加速させていた。

 米国の戦略が日本に上陸するのは時間の問題と見られ、国内の流通企業は危機感に駆られた。購買頻度の高い生鮮食品を宅配に奪われれば、店舗は顧客との接点を失う「ロストワンマイル」の危機にひんするからだ。

アマゾン生鮮宅配のアキレス腱(けん)

 17年には、アマゾンジャパンが日本で「アマゾンフレッシュ」を始めた。米国で始めていた生鮮食品の宅配サービスだ。対するイトーヨーカ堂は「17年間もノウハウを積み上げた。250万人の顧客は簡単に奪われない」と強気の姿勢を示した。

 「アマゾンフレッシュ」は、野菜や鮮魚、精肉など約1万7000点の生鮮品を含む、10万点以上の商品を「注文から最短4時間」で自宅に届ける。アマゾンは「高品質で新鮮な商品を、迅速に受け取ることができる」と強調したが、利用には年会費3900円の有料会員サービス「アマゾンプライム」への登録などが必要な上、1回当たり500円の送料もかかるなど、価格的な競争力はそれほど高くなかった。

 店舗から商品を届ける日本のネットスーパーに対して、アマゾンは全国に整備した物流拠点から配送する。アマゾンが輸送の大半を委託していたヤマト運輸では宅配の急増で、人手不足や過重労働の問題が表面化した。

アマゾンの物流を担う、新興勢力の素顔

 17年には、ドライバーの人手不足や労働負荷が拡大し、ヤマト運輸は当日配送の縮小・撤退の方向に動き始めた。一方で、アマゾンジャパンは当日配送を含むスピード配送をさらに強化した。物流部門を強化するため、独自の配送拠点整備に力を入れた。ヤマト運輸に代えて、「デリバリープロバイダ」と呼ぶ地域限定の配送事業者の活用を積極的に進めた。

 そうした配送事業者の一つが、1973年設立の丸和運輸機関だ。食品スーパー向けの物流改革とEC(電子商取引)向けの当日配送を成長分野と位置付けた。アマゾンとの取引開始を見込んで、660社を超える中小の物流会社や個人運送業者を組織し、中期的には2000社、トラック2万台を確保すると打ち出した。

苦戦の楽天、もがく巨人と連合

 18年1月には、楽天(現楽天グループ)が米ウォルマートと提携して、日本で新たなネットスーパー事業を共同展開すると発表した。ウォルマート傘下の西友が持つ「店舗からの配送」ノウハウを生かして、ネットスーパー市場での事業拡大を目指した。

 楽天は、12年から「楽天マート」というネットスーパーを展開していた。しかし顧客開拓は進まず、認知度も伸び悩んだ。楽天マートを運営する専門子会社の16年12月期の売上高は約9億円にとどまり、営業損益は約6億円の赤字だった。

 20年に楽天は米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)とともに西友に85%出資。コロナ禍で、生鮮食品の宅配に対する需要が高まると見て、ネット販売と西友の実店舗の連携強化を打ち出した。

ウーバーイーツでローソンから配送、1位はやっぱりからあげクン

 20年夏、コロナ禍で外出自粛が広がる中、コンビニ業界でもネットスーパーのような宅配サービスが広がり始めた。ローソンの物流を担うのは「ウーバーイーツ」だ。19年から導入を始めていた東京に続き、大阪や福岡などでも利用を始めた。20年6月最終週の売り上げランキング上位には、定番商品の「からあげクン」が並んだ。

 ファミリーマートも店舗でウーバーイーツの実証実験を始め、業界全体で新たなサービスの模索が始まった。

店舗生かす受け取りドライブスルー

 イオンリテールは20年9月、インターネットで注文して、店舗の駐車場で商品を受け取るドライブスルー式のサービスを東京都東久留米市のイオン東久留米店で公開した。東北以外の本州と四国の80店でもサービスを利用できる体制を整えた。

 スーパーが自宅に生鮮食品を宅配する方式の場合、コロナ禍の外出自粛が増えている状況では、希望する配送時間がすぐ埋まってしまう。また、指定した時間に在宅を続けることが難しい場合があり、外出帰りに店に立ち寄るほうが便利なこともある。

 イオンリテールはドライブスルー方式を一気に80店まで拡大し、宅配サービスを「使いたいのに使えない」という消費者の不満や営業機会損失を解消することを目指すという。

最後に

 生鮮食品などをインターネットで気軽に注文し、素早く自宅に配送してもらえるネットスーパー。スーパー大手、アマゾンや楽天に加え、コンビニ各社もネット通販に参入し始めている。ウーバーイーツに代表される食事の宅配サービスの浸透やコロナ禍での外出自粛継続もあり、ネットスーパーはますます浸透しそうだ。

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