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Thursday, October 14, 2021

ケンミンの冷凍ビーフン スーパーで1日1個しか売れないのに、なぜ自販機で50個も売れるのか - ITmedia

3分インタビュー:

 「SNSで話題のあの商品はどうやって開発したの?」「なぜこの会社はこんな取り組みを進めているの?」ちょっと気になっていた企業の“なぜ”をコンパクトに紹介します。

 サービスや製品に込めた思いや苦労話など、担当者にしか分からない「裏側」を徹底取材。仕事が忙しくて、じっくりと情報を得ることができない人でも読めるよう、できるだけ簡潔にまとめています。テレワーク中の息抜きや移動時間、就寝前に「3分インタビュー」でサクッと情報収集!

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 ケンミン食品(神戸市)の冷凍ビーフンが売れに売れている。「冷凍ビーフン? 食べたことがないなあ」という人も多いかもしれないが、それもそのはず。一般的なスーパーで、1日に1個ほどしか売れていないからだ。そんな状況なので、冷凍ケースの中でも片隅にポツンと置かれていることが多い中、9月1日に自動販売機で扱ったところ、1日に200個以上売れた日も。

 2倍ではなく、200倍である! ちょっと信じられない数字であるが、なぜこれほど売れているのか。同社で広報を担当している田中国男さんに話を聞いた。

自販機で冷凍ビーフンを販売したところ、売れている

業績「とんとん」がきっかけ

――ケンミン食品の本社ビル前(神戸市中央区)に、冷凍ビーフンの自販機を設置したところ、売れているそうですね。5種類の商品を扱っていて、一番人気は定番の「焼きビーフン」(2食入り、500円)だそうで。そもそも、なぜ自販機で冷凍ビーフンを販売しようと思ったのでしょうか?

田中: 2020年に新型コロナの感染拡大を受けて、スーパーなどで販売しているビーフン(ドライもの、冷凍もの)の売り上げはものすごく好調でした。いわゆる“巣ごもり需要”によって売れに売れたわけですが、一方で業務用は苦戦しました。当社の場合、コンビニ向けや給食用なども扱っていて、大幅に落ち込みました。さらに、レストラン事業を展開していて、そこも苦戦しました。

コロナ禍、レストラン事業は苦戦(画像は健民ダイニング)

 好調の事業と不調の事業がありまして、業績は「とんとん」でした。「このままではいけない。ビーフンを食べていただける機会が減ってしまう」「なにかしらカバーできる事業を展開しなければいけない」ということで、自販機に目をつけました。ギョーザやラーメンなどを扱っている自販機が増えてきたこともあって、社内から「ビーフンを販売してみてはどうか?」といった話が出てきて、本社の1階に出店することにしました。

一番人気は定番の「焼きビーフン」(2食入り、500円)

1日に50個も売れるのかな

――国道2号線沿いに設置しているので、クルマやバイクはたくさん走行していますが、人はそれほど多くないですよね。自販機の立地としては、あまりよいところとはいえませんが、設置前にはどのようなことを考えていたのでしょうか?

自販機で5種類を販売

田中: 自販機で冷凍ビーフンを販売したことがないので、どのくらい売れるのかよく分かりません。ただ、本体を購入しているので、利益は出さなければいけません。というわけで、初年度の売上目標は「1日に50個、月間1500食の75万円」を掲げました。ただ、正直なことを申し上げると、個人的に「1日に50個も売れるのかな。難しいのでは」と思っていました。

――それはなぜでしょうか? ちなみに、スーパーでは1日にどのくらい売れるのでしょうか?

田中: 一般的なスーパーで「1日に1個ほど」ですね。

――えっ? たったの1個?(失礼) スーパーで1日に1個ほどしか売れない商品を、「自販機で50個も売ろう!」なんて、ちょっと無理があるのでは?

国道2号線沿いに設置

田中: ワタシもそう思っていたのですが、実際に販売したところ、平日に50〜80個、休日に150〜200個ほど売れているんですよね。なぜ、これほど売れているのか。9月1日に設置したところ、地元のFMラジオ局さんから「紹介させていただきたい」という依頼がありました。で、放送されたところ、販売数がものすごく伸びまして。

 自販機を設置しているのは、国道沿い。クルマを運転しながらラジオを聞いて、「冷凍ビーフンを買える自販機があるのか。ちょっと買ってみようかな」という人が多かったのかもしれません。あと、本社の前に交差点があって、信号が赤になれば停車しなければいけません。そのときに自販機を見て、「なんだあれは? 1個だけ買ってみるか」という人もいました。

 さらに、周囲にはマンションがたくさん建っていて、そこの住民も買われたのではないでしょうか。「〇時に〇個売れた」といったことが分かるので、そのデータを確認したところ、午後11時から午前5時の時間帯に30個ほど売れた日もありました。「小腹が空いたので、夜食に一つ」となって、買われた人も多いのかもしれません。

知っている人と知らない人

――自販機を設置してみて、気付きなどはありましたか?

田中: 自販機を見て、「これは何ですか?」と聞かれることが多いんですよね。先ほど申し上げたように、スーパーでは1日1個ほどしか売れません。全国の生協(生活協同組合)で販売していただいているのですが、生協の会員にならなければ買うことができません。というわけで、冷凍ビーフンのことを「知っている人は知っている、知らない人は知らない」ということが分かってきました。

たらこと高菜の焼ビーフンも人気だという

 スーパーの冷凍ケースの中を見ると、ギョーザもあれば、唐揚げもあれば、麺類もある。このほかにも競合商品がたくさんあるので、冷凍ビーフンは苦戦してきました。当社は1950年に創業し、国内ビーフン市場の52.8%を占めているので、シェアは1位。歴史は長く、シェアは高いのですが、認知を高めるためにまだまだやらなければいけないことがたくさんあります。今後は、11月に兵庫県の丹波篠山市で、12月に福岡市で、それぞれ稼働させる予定です。

――知っている人と知らない人が“分断”していたわけですが、自販機での販売をきっかけに「知らない人を減らしていく」作戦ですね。本日はありがとうございました。

(終わり)

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