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Saturday, December 18, 2021

『スーパーロボット大戦30』レビュー ギリギリシリーズの平均的なクオリティで、30周年記念作品としては物足りない - IGN Japan

「スーパーロボット大戦」シリーズは、大好きなロボットの共演に原作の追体験や、かつて大好きだったアニメ作品の活躍を再び見たいという欲求を30年間叶えてきたシミュレーションRPGだ。長く続いている作品なだけにシステムは成熟しているが、30年目の節目を迎えた本作では、ストーリーをより深く楽しむための大胆なシステム改革を決行した。

しかし、システムの改革はボタンをかけ違えている面が多かった。改革の目玉となるプレイの有無も自由な「シナリオの選択制」は、隠し要素とフラグがどのシナリオで現れるかわからない面があるため、コアなファンほど「全部プレイするという選択肢」しか残されておらずボリュームが極端に肥大化。敵役を中心としたオリジナル要素の主張が弱いため、シナリオの接着剤の使命を果たせず、中盤を過ぎるまでまとまりのない断片的な作品を見続けているような感覚に陥る。戦闘アニメーションはシリーズ最高傑作だったが、完成度の低いUIやもうひとつインパクトや盛り上がりに欠ける参戦作品などもあり、全体的に30周年記念作品としては見劣りする作品に。

そんな『スーパーロボット大戦30』のレビューをするわけだが、今回はPC版、コントローラーはDUALSHOCK 4という環境でレビューを行った。

定番からの脱却を試みたゲーム進行

複数の作品が登場する都合上、「スーパーロボット大戦」では各参戦作品で描いた物語をひとつの世界観につなぎ合わせている。するとどうだろう。異星人やら地底人やら複数の勢力が、まるで申し合わせたかのように肩を並べて地球侵略にやってくる。そんな状況に陥っても人類同士の争いが止まることなく、むしろ全人類を滅亡させる勢いまで戦争を過熱させていく。宇宙でもっとも危険な種族は地球人ですよね……。ヤバい。

拷問をしても反抗的な反対勢力の指導者を、見せしめの意味も込めてギロチンにかけた狂人。本作では特に『機動戦士Vガンダム』に危険人物が集中している。<br />
拷問をしても反抗的な反対勢力の指導者を、見せしめの意味も込めてギロチンにかけた狂人。本作では特に『機動戦士Vガンダム』に危険人物が集中している。

本作でも、こうしたいろいろな意味で終わっている状況下でスタートする。ミッション(ストーリー)を順番にクリアしていく基本的な流れもこれまでのスパロボと同じで、各ミッションの多くは原作の印象的なエピソードを再現する形で構成されている。変化したのは「宇宙編」と「地上編」といったミッションの分岐がほぼ消滅して、1本のストーリーにまとまったことだ。代わりにプレイするミッションを適時選んで物語を進める選択制となった。

ストーリーに関わるミッションは、主にメインストーリーが進行する「キーミッション」と、特定の条件を満たすと発生する「サイドミッション」で構成されている。本作は「キーミッション」をプレイするだけでもクリアできるが、サイドミッションにはメインのストーリーを補足する内容が含まれているほか、新しい仲間や機体を得るためのものも数多く存在する。

☆のマークが付いているのがゲームが進行するキーミッション。黄色い文字のミッションは、優先的にプレイすることが推奨されるミッションで、サイドミッションにも適用される。<br />
☆のマークが付いているのがゲームが進行するキーミッション。黄色い文字のミッションは、優先的にプレイすることが推奨されるミッションで、サイドミッションにも適用される。

分岐していたシナリオが1本道にまとまったため、ゲームボリュームを考えるとプレイするミッションを取捨選択して、複数回のプレイにわけてプレイするのが望ましい。キーミッションをサクサクプレイして気楽に攻略してほしいというのが狙いが選択制にあると思うが、ifストーリーや隠し要素の多いスパロボと絶望的に合わない。原作にはなかったifストーリーを楽しめるのがスパロボの売りとなっているが、どのサイドミッションがフラグとなっているか予測するのは不可能なので、結局のところ手当たり次第ミッションをプレイすることになる。

たとえば筆者の場合は、前作でしっかり描かれた「マジンガーZ」や『魔法騎士レイアース』のストーリーはスキップしてもよさそうに感じていた。しかし、思いがけない作品が絡むこともあるため、出現するミッションを無視するのは心理的にとても難しいのだ。プレイの有無はプレイヤーに委ねられているものの、結果的にゲームプレイの肥大化を招いた。1回のゲームプレイでほぼすべてのストーリーを堪能できるわけだから、これは悪いことばかりでもない。とはいえ、序盤において仲間の有無でイベント内容が変化することもあり、ボリュームの肥大化はやはり辛い。

ある程度割り切りながら、何度も遊べるという意味でも従来の分岐シナリオの方が手軽に遊べてよかったように思える。また選択制にするのであれば、ミッション選択時には、シナリオに関連するすべての作品をリストアップしてもよかったように思う。

イベントに外せない強制出撃する機体を事前確認できるが(画像右下)、遊ぶシナリオを選ばせるのであれば、出現する作品を表示してもいいように思う。<br />
イベントに外せない強制出撃する機体を事前確認できるが(画像右下)、遊ぶシナリオを選ばせるのであれば、出現する作品を表示してもいいように思う。
誕生したばかりの他作品の超AIロボットに対して発破をかける竜馬。こうしたコラボイベントも、仲間の有無で変化したりする。<br />
誕生したばかりの他作品の超AIロボットに対して発破をかける竜馬。こうしたコラボイベントも、仲間の有無で変化したりする。

AUTOバトル以外に大きな変化はない戦闘システム

本作は、将棋のように四角いマスで区切られた戦闘マップにユニットを配置して、敵(AI)と交互にユニット(機体とパイロットを合わせた駒)を動かして戦うシミュレーションゲームだ。将棋と違うのは、お互いのターンで自陣のすべての駒を1回ずつ動かせることだ。

本シリーズは基本的に敵ユニットのほうが基本能力値が高い。使用するユニットの適正に合わせて適切な強化をしないと、エースパイロットですら敵の一般兵に倒されてしまう。その戦力差を補うように、「精神コマンド」でユニットの能力を一時的に強化したり、改造しながら敵を圧倒するスタイルで楽しんだり、あえて無改造で戦術的な攻略も楽しめる。

精神コマンドのひとつ「分析」。敵に使うと与える攻撃ダメージが1.1倍に増加し、被弾ダメージが0.9倍になる。わずかな変化だが、ほかのスキルと掛け合わせることで超高倍率攻撃の重要な足がかとなる。<br />
精神コマンドのひとつ「分析」。敵に使うと与える攻撃ダメージが1.1倍に増加し、被弾ダメージが0.9倍になる。わずかな変化だが、ほかのスキルとかけ合わせることで超高倍率攻撃の重要な足がかとなる。

難易度については、なかなかひとことで語るのは難しい。本作は強力な機体や扱いやすくなった機体が多いため、慣れていれば最高難易度に設定しても敵を容易に蹴散らせる。歴代シリーズの中でもっとも易しい部類だと思う。ただ、スキル「底力」(自機のHPが0に近づくほど防御力と回避率が上昇していく)の防御力補正の計算式が変化したことで敵の防御力が飛躍的に上昇するようになった(味方もだが)。無改造や、ある程度改造を制限しながらプレイするコアなファンには逆に難易度は高く感じられると思う。また、主力機体を集中して強化するといった攻略のセオリーを知らない初心者にも、本作のバランスはやや難しく感じるかもしれない。

左が通常状態て敵の攻撃命中率は80%、右が底力発動状態で命中率は8%に。底力は敵が使うと驚異だが、防御力や回避率が上がるため、恐れずダメージを受けて底力をうまく発揮することが攻略の鍵となる。<br />
左が通常状態て敵の攻撃命中率は80%、右が底力発動状態で命中率は8%に。底力は敵が使うと驚異だが、防御力や回避率が上がるため、恐れずダメージを受けて底力をうまく発揮することが攻略の鍵となる。

ミッションは「敵を全滅」、「特定のユニットを倒す」などの条件を達成することでクリアできる。少し残念だったのは、クリア条件以外に用意されていた「○ターン以内に敵を倒せ」といった特殊条件が廃止されたことだ。こうした条件は少しわずらわしく感じることもあるが、基本的に難しい条件をクリアする達成感や、そこからクリアボーナスも得られていたので攻略のモチベーションとなっていた。また、特殊なクリア条件がなくなったことで無理をして極端に短い手数で攻略する必要がなくなり難易度が易しく感じられる要因にもなっている。

戦闘時の新規要素はAUTOバトル。しかしながら、AUTOは攻略に必須な精神コマンドを使わないため、AUTOだけでは攻略が難しいバランスだった。ある程度行動パターンは設定可能だが、雑魚相手にも苦戦しやすい。ただ、大量のユニットを敵に向かって動かしたいだけという場合は便利なほか、「○○戦線」とよばれる、本編とは関係ない経験値やCREDITを稼ぐためのミッションで重宝する機能だった。

敵と離れている最初の1ターン目に、オートで大量のユニットを動かすという使い方が便利だった。<br />
敵と離れている最初の1ターン目に、オートで大量のユニットを動かすという使い方が便利だった。

しかし筆者にとっては、まったく予想外の部分で厄介な機能だった。メニューを開こうとして、ほかのゲームでよくメニューが割り当てられているOPTIONボタンをつい押してしまうのだが、それにAUTOが割り当てられているためAUTOが暴発してしまうのだ。押した瞬間に1ユニットの行動が確定してしまうため、意図しない移動や戦闘が発生してミッションをやり直すことが何度もあった。原因は自分のミスで、中断セーブをしておけばそこからやり直しができるものの、ちょっとわずらわしい。

こうしたUIの基礎設計は全体的に完成度が低い。その筆頭は戦闘時のメニューリストのデザインだ。メニューは中央にある項目を選択/実行するように設計されていて、上下を押すとリスト全体が上下に動く。回転すると言ったほうがいいかもしれないが、メニューの項目は波打つように斜めにも動くため、必要な項目が簡単に行方不明になってしまう。見た目はよくなったかもしれないが、遊びづらくては本末転倒だ。

ほかにもどの機能がどこにあるかがわかりづらい、どのように動かしていいのかがわからないなど、本作のUIはところどころで使い勝手が悪いのが気になった。

どこにどの項目があるのか分かりづらく、ユニット選択時には項目が変化するので覚えるのも苦労する。<br />
どこにどの項目があるのか分かりづらく、ユニット選択時には項目が変化するので覚えるのも苦労する。
リストメニューからミッションを選ぶことができるが、この「インターミッションマップ」からしか選べないミッションも存在する。カーソルは上下を押しても動かず、左右を押さないと動かない癖のあるUI。<br />
リストメニューからミッションを選ぶことができるが、この「インターミッションマップ」からしか選べないミッションも存在する。カーソルは上下を押しても動かず、左右を押さないと動かない癖のあるものとなっている。

作品の選択やストーリー展開は見事だがオリジナルが弱く、サプライズ的には物足りず一部で不満も残る

原作の物語はかいつまんで再現されるが、すべての作品が再現されるわけではない。ストーリー構成の関係で原作で描かれた戦争が終結しており、戦争が起きたのは過去の話といった作品も存在する。そうした作品は独自解釈による原作後のifといった形で物語が描かれていたり、設定や登場人物などをほかの作品と関係性をもたせて描いたりもする。

「マジンガーZ」の設定がいろいろな作品で顔を出すのは少し強引な気もしたが、ストーリーのコラボは無理をしておらず、まるで関連作品・シリーズ作品と思えるほど自然な形で描かれることが多かった。シリーズレギュラーとして登場している「真・ゲッターロボ」、『機動戦士ガンダム』、「マジンガーZ 」の各主人公が、同級生のようなベテランパイロットとして描かれるのはもはや定番だが、ガンダム作品全体を絡ませながらifストーリーを描いたのは、まるで新しいガンダム作品を見ているようで新鮮だった。『コン・バトラーV』だけは、ほかの作品との絡みも少なく正直オマケ程度だったが……。

マジンガーZは、ほかの作品のキャラクターも憧れるスーパーロボット。<br />
マジンガーZは、ほかの作品のキャラクターも憧れるスーパーロボット。

一方で、オリジナルキャラクターやストーリーの魅力はかなり薄い。特に敵役は出番自体が少ないため、ストーリーの絡みも自然と弱くなっていった。終盤を盛り上げるためのあからさまな布石作りで、ひとりの敵キャラがたまーに顔出ししては撤退を繰り返すばかり。昔の作品は3部作構成で描いていたこともあり、個性の強いオリジナルキャラクターの戦闘曲にオリジナルソングを用意するほど気合いが入っており、シナリオ全体をしっかりとまとめていた。しかし近年は、1作で完結する手軽な作品にまとめているため、どうしてもオリジナルキャラクターがシナリオに入り込む余地が少ない。とは言え本作は、そうした事情を差し引いてもオリジナルキャラやシナリオの魅力が足りない。

ガンダム継投のコラボをはじめとした個々の作品間のコラボを十二分に楽しめるものの、オリジナルが全体をとりまとめる接着剤としての役割を十分果たせず、終盤にさしかかるまでは作品全体としてのまとまりも欠けている。3部作時代の旧スパロボシリーズを完璧に仕上げたコース料理だとすれば、本作は個々のストーリーは十分楽しめる高級ホテルのビュッフェといったところだろう。悪くはないのだ……悪くは。

オリジナルの敵キャラクターのひとりだが、キャラクター自体の魅力もイマイチ。<br />
オリジナルの敵キャラクターのひとりだが、キャラクター自体の魅力もイマイチ。

シリーズでも特にクオリティの高い戦闘アニメーション

シリーズの売りである戦闘アニメーションは、原作のアニメーションと瓜二つに再現したり、戦いの流れを再現したりといろいろな角度から演出している。機体のデザインは過去の作品から流用されるのが普通なのだが、ガンダム作品の機体の多くはデザインが一新されており、30周年作品として並々ならぬ気合いを感じることができる。戦闘アニメーションに関して言えば、シリーズ最高傑作と言ってもいいだろう。ガンダム作品のデザインの変更は、新登場する機体が多いこともあり、ほかの作品と頭身やデザインのテイストを合わせたのかもしれない。

久しぶりに登場となった『機動戦士Vガンダム』など、ガンダム作品は新作と同等の扱いの機体が多い。<br />
久しぶりに登場となった『機動戦士Vガンダム』など、ガンダム作品は新作と同等の扱いの機体が多い。

原作アニメの再現性という点では、『勇者警察ジェイデッカー』が特に優秀だった。原作アニメは合体変形の演出が多い作品だったが、エネルギーがメーターを振り切るような細かい描写もしっかり描きつつ、ひとつひとつの必殺技をしっかりと再現している。

激しい戦闘シーンを再現したのは『銀河機攻隊マジェスティックプリンス』だ。機体が変形して性能限界を超えるような、スピード感あふれるカッコいい戦闘シーンを見事に表現している。それだけでなく、アニメで描かれた主人公とその仲間の成長と、努力の末勝ち取ったチームワークを、本作では合体攻撃という形で演出していた。

主役級の機体には、こうした大迫力の戦闘アニメーションが用意されている。<br />
主役級の機体には、こうした大迫力の戦闘アニメーションが用意されている。

アニメーションはいずれも素晴らしいが、エルガイム(機体)は、脚部に仕込まれたランダムスレート(装甲)の開閉やフロッサー(飛行するための仕掛け)を使った、原作のメカニクス満載のアクションは若干物足りなかった。もっともこれは筆者がロボットに惚れ込んだ、まるで原点のようなピンポイントに印象深い描写だったので不満を抱いてしまったという側面もある。こうしたマニアックなこだわりに耐えられない描写は多々あるのだが、そこまで厳しい目を向けなければ不足を感じることは少ないだろう。

シリーズ30周年というメモリアル作品と考えると、収録作品や機体に不満が残る

参戦作品でサプライズだったのは、本作で初めて映像化されることになった『覇界王~ガオガイガー対ベターマン』と、ロボットというよりもウルトラマンのようなヒーローに近い『SSSS.GRIDMAN』あたりだろうか。機体だけであれば、『コードギアス 反逆のルルーシュ III 皇道』で未完成だった「月虹影」が、スパロボオリジナルの完成型の機体「月虹影師」として登場したのもファンにとってはうれしいサプライズだった。

『スーパーロボット大戦30』で完成した「月虹影師」。<br />
『スーパーロボット大戦30』で完成した「月虹影師」。

とはいえ、シリーズ30周年の作品と考えて収録作品全体を見ると若干パワー不足。「マクロス」シリーズや『天元突破グレンラガン』といった、ネームバリューのある作品や、圧倒的なエネルギーに満ちあふれた作品などをもう少し収録して、30周年をお祭り騒ぎにしてほしかった。

本編にも顔を出す追加DLCキャラクター&追加シナリオ

『スーパーロボット大戦30』のレビューという観点からは少しそれるが、30周年のお祭り騒ぎとしての部分を補うのが各種DLCなのでそれについても書いておく。とりわけ隠し機体から有料DLCへと転換したHi-νガンダムについては無視できない存在と言っていいだろう。

初回特典DLCではSRXとサイバスターが収録。有料DLCで「サクラ大戦」シリーズがサプライズ参戦するのは個人的にも盛り上がった。一応DLC作品専用ミッションも付属する。特典DLCのキャラクターと、有料DLCでシナリオが関連付けられているなど凝っており、難易度はオマケ程度だがボリューム面でもそれほど悪くはない。数は少ないが、本編のシナリオに顔を出すこともあるので、使っていて完全に空気になることはなかった。

個人的に期待外れだったのは「サクラ大戦」のBMGで、「プレミアムサウンド&データパック」相当のボーカル曲ではなく通常曲だったことだ。収録する3作品ごとに主題歌が異なるので収録が余計と難しかったと思うが、『檄!帝国華撃団』のボーカルは入れてほしかった。

ヒロインとの合体攻撃もあるなど、「サクラ大戦」シリーズの戦闘アニメーションは大満足。<br />
ヒロインとの合体攻撃もあるなど、「サクラ大戦」シリーズの戦闘アニメーションは大満足。
「サクラ大戦」といえば主題歌『檄!帝国華撃団』だが、DLCに収録されるのはBGM版のみ。カスタムBGM機能で手持ちの主題歌(MP3ファイル)を登録して楽しむことにした。<br />
「サクラ大戦」といえば主題歌『檄!帝国華撃団』だが、DLCに収録されるのはBGM版のみ。カスタムBGM機能で手持ちの主題歌(MP3ファイル)を登録して楽しむことにした。

収録機体で残念だったのは、「スーパーロボット大戦」シリーズで人気の隠し機体「Hi-νガンダム」も有料DLCになったことだ。細部を見ると前作までのHi-νガンダムとデザインが変化しているのがわかる。前作までは、近年リファインされてプラモデルとして製品化されている新デザインが採用されていた。一方、本作のHi-νガンダムは、原作小説に登場した初期デザインをベースした、ガレージキット化時に作られた旧デザインだ。

これはある意味オリジナルのHi-νガンダムが映像化されたと言える。本編は劇場版のストーリーをベースにしているが、DLCは小説「ベルトーチカチルドレン」を再現している。DLC化している意味はあるものの、これまで普通に本編に収録されていた要素を有料DLC化する理由としては弱く、ファンとしてなかなか納得いくものではない。DLCシナリオの決着も煮え切らず、小説版でのみ誕生するアムロの赤ん坊が登場するわけでもない。前作から攻撃の種類が減っているのもマイナスポイントだ。特別なことをやるのであれば、小説版「ベルトーチカチルドレン」を本編のベースにして、DLCはアムロがスピンオフで搭乗したリック・ディジェ(アムロ専用機)やΖプラス(アムロ専用機)を改装した機体でも良かっただろう。原作の時系列的に過去に活躍した機体なので、DLCシナリオは完全オリジナルになりそうだが。

左は『スーパーロボット大戦T』のHi-νガンダム、右が『スーパーロボット大戦30』のHi-νガンダム。ハッキリ違いが分かるのは顔や脚まわり。<br />
左は『スーパーロボット大戦T』のHi-νガンダム、右が『スーパーロボット大戦30』のHi-νガンダム。ハッキリ違いがわかるのは顔や脚まわり。

またDLC機体全般に言えるのだが、一定の数の敵を倒すことで新しいミッションが出現したり、新しい武器を手に入れたりといった機体への追加要素が見当たらなかった。そのため隠し要素が存在する機体やパイロットを中心に部隊を組むことが多いので、せっかく好きなDLC機体はなかなか使いづらいという問題があった。

戦闘アニメーションやifストーリー/コラボストーリーは、まさにスパロボの集大成と言えるクオリティだ。だが全体的にストーリーにまとまりがなく、UIデザインも意味不明な部分があるなど、シリーズ30周年記念作品としての期待には応えられていなかった。

スパロボシリーズの代名詞とも言える戦闘アニメーションは、原作の再現度がとても高く、シリーズ30周年にふさわしいクオリティだ。さらにifストーリーを描いたりコラボをしたりと、個々の原作ストーリーも申し分ない。だがオリジナルキャラやストーリーの主張が弱く、作品間をまとめる接着剤としての役割が機能していない。ミッションは好きな順番でプレイできるようになったものの、取捨選択が難しく、結果的に極端なボリュームの肥大化を招いている。新デザインのUIは使いづらい部分が多く、作品全体を通してみると30周年記念作品としての期待には応えられていない。

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