欧州は、スーパーコンピューターで世界を先導しているとは言い難い。しかし、現在使用されている最も強力なシステムに匹敵するシステムを調達するべく、新たなプロジェクトに乗り出している。
欧州高性能コンピューティング共同事業(EuroHPC JU)は、ハイエンドスーパーコンピューティングをホスト、運用する組織を選定しようとしており、公募要件などを提示している。EuroHPC JUが12月に公示した内容によると、欧州連合(EU)はこのプロジェクトに最大2億5000万ユーロ(約320億円)を投じ、「エクサスケールの性能を持ち、1秒間に少なくとも10億回の演算が可能なハイエンドスーパーコンピューター」を調達する計画だ。EuroHPC JUは、「世界をリードする、フェデレーテッドでセキュアなハイパーコネクテッドスーパーコンピューティング、量子コンピューティング、サービス、データインフラのエコシステムを、欧州連合(EU)内で開発、展開、拡張、維持する」ために設立された組織だ。
また、EuroHPC JUは「需要志向でユーザー主導の、革新的かつ競争的なスーパーコンピューティングシステムの開発と普及を支援する。このシステムは、部品、技術、知識を確保できるサプライチェーンを基盤とし、これらシステム向けに最適化された広範なアプリケーションの開発および中断のリスクを制限する」としている。
さらに、スーパーコンピューティングインフラの利用を、産業界や政府機関、そして多数の民間のユーザーにも拡大することもミッションとなっている。
Digital Europe Programmeが提供する資金を、調達費用の約半分と、スーパーコンピューターの運用費の半分に充てる。スーパーコンピューターは、EuroHPC JUが所有する。
EuroHPC JUは「ハイエンド」スーパーコンピューターの要件の1つに、「少なくともスーパーコンピューターランキング『TOP500』に応募時の『レベル1』の測定品質を実現できること」を挙げている。また、現在世界最速とランク付けされている、日本の「富岳」を超えるほどの性能も求めている。
非常に野心的なプロジェクトだが、EuroHPC JUには大きな仕事が待ち受けているだろう。TOP500リストは、米国、中国、日本のスーパーコンピューターが席巻している。日本の「富岳」が毎秒442ペタフロップスのベンチマークスコアで首位を堅持しているほか、中国の「Tianhe-2A」、米エネルギー省のIBM製「Summit」などが上位にランクインしている。
欧州のスーパーコンピューターは2件がトップ10入りしている。1件は、NVIDIAのGPUを搭載する「HPC5 Dell EMC PowerEdge」システムで、イタリアのエネルギー企業Eniに設置されている。TOP500によると、ベンチマークは35.5ペタフロップスだ。
EuroHPC JUは、ハイエンドのスーパーコンピューティングの要件として、総性能レベルで「少なくとも1エクサフロップ」を発揮できるコンピューティングシステムを挙げている。
EuroHPC JUはこれまでに、欧州全体で7台のスーパーコンピューターを調達している。ペタスケールのスーパーコンピューター5台として、スロベニアの「Vega」、ルクセンブルグの「MeluXina」、ブルガリアの「Discoverer」、チェコの「Karolina」、ポルトガルの「Deucalion」がある。また、プレエクサスケールの2台に、フィンランドの「LUMI」とイタリアの「Leonardo」があるほか、3台目としてスペインの「MareNostrum5」の調達を進めている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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