将棋界のトップクラスで活躍した個性派の名棋士たちが今春、相次いで引退した。印象に残る一局、弟子たちへの期待……。長い戦いを終え、それぞれの思いを語った。
「異名」からは、個性派棋士たちの将棋人生が浮かびます。「いぶし銀」こと桐山清澄さんに続き、記事の後半では、「序盤のエジソン」田中寅彦さん、「スーパー四間飛車」の代名詞でも知られる小林健二さんをご紹介します。将棋担当記者が撮影した、それぞれの節目の日の動画もご覧ください。
探究続けた最年長棋士 桐山清澄九段
桐山清澄(きよずみ)九段(74)は奈良県出身、大阪府高槻市在住。1966年4月1日付でプロ棋士と認められる四段に昇った。タイトル獲得4期(棋王1期、棋聖3期)、第1回全日本プロ将棋トーナメント(朝日新聞社主催)など棋戦優勝7回の強豪で、プロ好みの渋い指し回しから「いぶし銀」という異名を持つ。弟子に矢倉規広七段(47)、豊島将之九段(32)がいる。
2019年度の第78期名人戦・C級2組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)で3回目の降級点を喫し、C級2組から陥落。その後は、桐山九段は近年、規定によりランキング戦5組在籍で参加条件を満たしていた竜王戦に限って対局を続行した。2年間は「5組残留以上」なら現役続行できる決まりだった。20年7月と21年5月に「敗れたら引退」という対局を迎えたが、いずれも勝利。過去9人しか達成していない1千勝達成も目標に、驚異的な頑張りを見せてきた。
だが、これも規定により3年目には現役続行の条件が「4組昇級」と厳しくなった。21年12月と22年2月の対局で敗れ、昇級の可能性が消え、現役続行の条件を満たせないことが確定し、引退が決まった。
桐山九段は4月27日、大阪市福島区の関西将棋会館で第35期竜王戦の5組残留決定戦で畠山鎮(まもる)八段(52)との対局に臨んだ。愛用の振り飛車に構えた桐山九段は、AI(人工知能)を活用した事前研究で練りあげた新工夫を披露。もともと居飛車側がよく用いる「ミレニアム」という堅固な玉の囲いを、振り飛車側で試みたのだ。「AIの形をちょっと拝借しました」と対局後に桐山九段。対戦した畠山八段も「桐山先生の探究心はすごい」と感嘆していた。
78手で敗れ、56年の棋士生活での通算成績は996勝958敗に。1千勝に、わずかに届かなかったが、「最後の対局は、自分の将棋を指そうと思っていた。精いっぱい指しましたので、悔いはありません」と桐山九段。
勝っても負けても現役最後の対局と決まっていた本局で、桐山九段は工夫を凝らし、最後まで頑張る姿勢を見せた。将棋界の後輩たちへの素晴らしい贈り物だと思う。
感想戦終了後、別室での記者会見では、温厚篤実な人柄がにじんだ。
記者会見では「いぶし銀」と呼ばれた理由を本人が「解説」。居飛車(党)から振り飛車(党)に転向したのは故大山康晴十五世名人(1923~92)の影響と明かし、「大山十五世の振り飛車に勝てなくて、逆に私が飛車を振ろうと思った。『大山十五世なら、こう指すだろう』と思って指していたら、渋い手が多くて。たぶん、それで『いぶし銀』と名付けられたのでは」と笑顔。「自分自身、派手なことが好きじゃないもんですから」と続け、それも含めて、「ありがたい名前をいただいたと思っています」と感謝した。
この日、桐山九段が対局した…
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