第三者が動画サイト「ニコニコ動画」で人気の動画ジャンル「ゆっくり茶番劇」を文字列として商標登録し、物議を醸した問題を巡り、新たな火種が発生している。ゆっくり茶番劇同様、第三者が「スーパーニンテンドーワールド」と「童貞を殺すセーター」を文字列として特許庁に商標出願していることが5月25日、分かった。記事執筆時点(同日午後4時50分)では、いずれも出願が受理されたのみで、審査待ちの状態だが、今後の状況次第では、第二の“「ゆっくり茶番劇」騒動”に発展する可能性がある。
スーパーニンテンドーワールドは、人気テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)内に2021年3月に開業した、任天堂のゲームをテーマにしたアトラクションエリア。24年には「ドンキーコング」をテーマにしたエリアが開業予定だ。
特許庁の特許情報検索サービス「J-PlatPat」によると、スーパーニンテンドーワールドを商標出願したのは、愛知県名古屋市の新實慧太郎(にいみ・けいたろう)さん。「婚礼(結婚披露を含む)のための施設の提供、祭壇の貸与、装身具の貸与、施設の警備、身辺の警備」を目的に、22年1月1日に出願したという。出願番号は「商願2022-12」。現在は審査待ちを示す「係属-出願-審査待ち」の状態だ。
特許庁は審査開始までの目安期間を公式Webサイトで公開しており、これによると、スーパーニンテンドーワールドの審査開始には1年弱かかるとみられる。現行の商標法は、商標登録後、公報に掲載されてから2カ月間の異議申し立て期間を設けている。スーパーニンテンドーワールドの場合、異議申し立てが可能であることを示す「存続-登録-異議申立のための公告」のステータスではないため、異議申し立て期間はまだ始まっていないということになる。
任天堂は取材に対し「出願があったことは社として承知している」とした上で「(具体的な)コメントは差し控える」と回答している。
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「審査待ち」の「童貞を殺すセーター」
これに加え、ノースリーブで背中が大きく開いているデザインのセーターを指す「童貞を殺すセーター」も文字列として出願されている。露出度が高く、女性経験がない男性には刺激が強すぎることからネットスラングの一つとして17年ごろから使われ始めた。
現在では、グラビアアイドルらがSNSでのファンサービスの一環として活用している他、一部Web媒体が記事タイトルに使用するなど、ネット上の世界では「セクシーな服装」を指す用語として定着しつつある。ECサイト「Amazon.co.jp」でも、商品名に使用しているケースが複数あることを確認した。
そんな童貞を殺すセーターを出願したのは、mikeyという企業。事業内容や所在地は不明。4月20日に「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類」を指す文字列として出願され、5月18日に特許庁ポータルサイトに公開された。出願番号は「商願2022-52057」。特許庁によると「公開後3〜4週間後にステータスが更新される」といい、現在は「係属-出願-審査待ち」の状態とみられる。
商標情報を発信するTwitterアカウント「商標速報bot」(@trademark_bot)で、約7900リツイート、2万8000のいいねを記録するなど話題となっており「日本の未来は大丈夫なのだろうか」など、一般化しつつある用語を独占しようとする動きに懸念の声が出ている。
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一方で、物議を醸した「ゆっくり茶番劇」の商標情報は現在、どうなっているか。ゆっくり茶番劇は21年9月13日に出願され、同月28日に公報に公開された。出願者は熊本県熊本市の石氷匠さん、代理人は古岩信嗣さんと古岩信幸さんが務めている。出願番号は「商願2021-114070」、目的は「電子出版物の提供、図書及び記録の供覧、図書の貸与、移動図書館における図書の供覧及び貸与、オンラインによる電子出版物の提供(以下略)」としている。
その後、審査を経て、22年2月24日に商標として登録され、翌月3月4日に公報に公開された。商標権者のYouTuber「柚葉」さんは、異議申し立て期間終了後の5月15日に商標登録を自身の公式Twitterアカウントで公表。使用料として10万円を請求するとしたことで物議を醸し、ドワンゴやゲーム「東方Project」を手掛ける同人サークルの上海アリス幻樂団を巻き込んだ一大騒動に発展した。
これを受け、柚葉さんは「誹謗中傷で本来の目的を全うすることが困難」として、5月24日、特許庁に対し、商標登録を抹消する申請を出したと自身の公式Twitterアカウントで発表した。
ただ、依然として商標権は抹消されておらず、ステータスも異議申し立て可能であることを示す「係属-出願-異議申立のための公告」のままだ。商標権抹消が確定するか、今後、注目を集めそうだ。
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